台湾進出で従業員の協力を得て成功するためのリーダーシップ論の話

台湾進出にあたって、新しい組織を形成し、台湾市場で販売拡大を狙うということは、今まで国内のみで事業を展開してきた人たちにとって、それは新たな変革となるでしょう。

個人で進出するにしても、現地で台湾人を採用することになりますし、台湾企業との合弁で進出するにしても、日本人従業員、台湾人従業員の協力を得ずして事業の成功はまず有りえません。ましてや言語、文化、生活スタイルも異なる台湾人従業員と一緒になって同じ目標を目指していくには、日本人従業員同士が日本国内で事業を推進していくのとまた勝手が変わってきます。

今回は、台湾進出にあたって、言語、文化、生活スタイルが異なる台湾人従業員の協力を得ながら、一つの目標に向かっていくために、リーダーはどのような経営スタイルをとって台湾人従業員と接していくべきなのか、を検証します。

この課題には、2006年10月ハーバード・ビジネスレビューにて発表された「The Tools of Cooperation and Change (By Clayton M. Christensen, Matt Marx, and Howard H. Stevenson)」にて説明されているアグリーメントマトリックスという手法を用いて検証します。

2つの指数

この記事の著者であるハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授らによれば、組織を新たな方向に導くために、リーダーは以下2つのポイントについて、従業員がどの程度同意をしているのか、を把握しなければいけないとしています。
1.「会社が掲げる目的」に対する従業員の合意
2.「会社が実行する実現手段」に対する従業員の合意

赤やじるし1.「会社が掲げる目的」に対する従業員の合意
「従業員がその企業で働く事によって得られるモノ」と「会社が掲げる事業の目的や意義、優先事項等」がどの程度一致していて従業員が共感できるのかという程度を意味します。

041590台湾進出にあたって、事業を展開していく目的や意義、優先すべき内容などは、台湾人従業員とどの程度共有できているでしょうか?それは、台湾人従業員が求めるモノとどの程度一致しているでしょうか?

例えば、あなたの会社が台湾でインテリア雑貨を販売する場合を考えてみましょう。「このインテリア雑貨を台湾で販売することによって、台湾人のインテリア生活をより豊かにしたい。」という目標を掲げた場合、その業務に携わる台湾人従業員は、その目標に対してどの程度同意してくれるのでしょうか?これはその度合いを示した指数であり、リーダーとしては、従業員のその度合いを把握しておくことが大切です。

赤やじるし2.「会社が実行する実現手段」に対する従業員の合意
会社が掲げる目標を達成するために、この方法を用いればこれを達成することができる、という企業の考え方ややり方(実現手段)に、従業員がどの程度同意してくれるかを表すものです。

台湾進出に際して、もし台湾人従業員がその手段とそれによって得られる結果に対して同意してくれるのであれば、企業が推進するその実現手段についても理解を示してくれることでしょう。

先ほどのインテリア雑貨の会社を例にとってみましょう。
台湾進出にあたって、
「中国語によるオンラインショッピングページを立ち上げ、それに焦点を置いたマーケティング活動を行う。」
「日本で実績のあるオンラインショップ業者の業務フローに沿って業務を行う。」

という手段を採用し、
「これらの手段がインテリア雑貨を台湾で売上アップに直結する。」
と結論づけたとします。
これに対して、台湾時に従業員がどの程度納得してくれるのか、という指数です。
会社として、この度合いを把握していくおくことが大切になります。

アグリーメントマトリックス

クリステンセン教授らによれば、これらの2つのポイントについて以下のようなマトリックスで表すことができるとしています。
(具体例については当協会にて加筆)

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まず、【A】のエリアは、「会社が掲げる目的」と「会社が実行する実現手段」が会社と従業員との間で考えが一致しており、お互いに合意を得ている企業がここに入ります。
当協会の見解としては、ここに属する企業は、企業文化が確立されており、伝統的で実績を十分にあげている台湾のIT系大企業がこのエリアに属すると言えるでしょう。

基本 CMYK【B】のエリアは、従業員は「企業の目標を実現しようとする志」はそれほど高くはありませんが、自分たちが行っている仕事によって、「会社が求める目的を確かに実現できる。」つまり、原因と結果が一致しているのであれば、会社に協力することは嫌ではない、と考える従業員が多くいる企業がこのエリアに属します。

当協会の見解としては、一人一人が個人事業主のごとく案件を持ち、ある程度自分の裁量でプロジェクトを遂行していくことができる、台湾にある外資系コンサルティング会社などがこのエリアに属すると考えています。

【C】エリアは、「会社が掲げる目的」については従業員と合意ができているが、「会社が実行する実現手段」については同意が得られていない企業がここに入ります。

当協会の見解として、このエリアに位置するのは、若い台湾人社長が立ち上げたニューベンチャーなどが当てはまると考えています。ニューベンチャーとして、会社が実現したい目的は、従業員は十分共感できるのですが、その実現するための手段として、マーケティング戦略に納得できなかったり、経験がまだまだ浅いため、各種業務手順が定まっていなかったりと従業員の納得が得られないと言う場合がこれにあたります。

【D】のエリアは、会社が掲げている目標についても、その目標の実現手段についても、会社と従業員との間で合意が得られていない場合がここに分類されます。例としては、日本でもたまに話題になりますが、学級崩壊ししまい教師が児童を収集できなくなってしまった小中学校のクラスがここに分類されるでしょう。

どのリーダーシップ手段を採用するのか?

台湾進出を行うにあたって、あたらしい組織を形成し改革を推進していく場合は、まず自分たちの組織がこの4つのエリアのどこに分類されるのかを知っておく必要があります。クリステンセン教授らの研究によれば、それぞれのエリアに対して、従業員からの協力を得るために、それぞれ適切な手段があるとしています。

台湾進出に当たってあなたが形成する組織は、このうちどれに属するのかを考え、台湾人従業員に対してどのようなリーダーシップ手段を採用したら良いのか、を考えながら見ていくようにしましょう。

●企業文化的手段(Culture Tools)
●経営管理的手段(Management Tools)
●リーダーシップ的手段(Leadership Tools)
●権力的手段(Power Tools)

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赤やじるし企業文化的手段(Culture Tools)【A】
企業が掲げる目標についても、そしてそれを実現するための業務フローや戦略についても、従業員が合意している場合は、【A】のエリアに属することとなります。
クリステンセン教授らによれば、【A】に属するエリアでは、従業員は現状を維持するためなら喜んで協力するとしています。そのため何か改革を進めようとすると、大きな従業員の反発にあったりしてうまく進まないことがある、としています。

この【A】エリアに属する企業であれば、大きな改革を積極的に進めると言うよりは、現在会社が保有する資産や業務フロー、ブランドなどを生かして、シナジー的な事業で新しいことに挑戦していくという手段が最適であると考えられます。

赤やじるし経営管理的手段(Management Tools)【B】
【B】エリアに属する会社の従業員に対しては、教育研修、業務手段の標準化、または評価基準制度、金銭的インセンティブ等を従業員に与え、目的を実現するために協力してもらう手段として、経営管理的手段が適切と言えるでしょう。
先ほどのインテリアで雑貨の企業を例にとってみると、小さな成功を収め、従業員からそのマーケティング戦略についてある程度の合意を得ることができれば、さらに従業員のモチベーション向上のため、従業員研修や評価制度そしてボーナスを与えるなどの手段が考えられます。
そうすることで、「マーケティング戦略のやり方に納得はしたけれども、なぜ台湾で販売しなければならないのか?」と企業目標に同意できない従業員であっても、評価制度やボーナス等のシステムがあることで、モチベーションを下げずに仕事に取り組んでくれる事を期待することができます。

赤やじるしリーダーシップ的手段(Leadership Tools)
企業が掲げている目的と従業員が仕事で求めているものが一致していれば、あとは、カリスマ的なリーダーシップを発揮したり、リーダーのビションを全面的に押し出したりして、従業員に協力してもらうことが、最適な手段と言えるでしょう。

ニューベンチャーのような若い企業の場合、企業目標に同意している、共感を得ることができると言う理由で、リーダーについて来てくれることがよくあります。
それを実現するための手段がまだ未整備であったとしても、リーダーの人柄、情熱、カリスマ性から、従業員の協力を得て、少しずつ小さな実績や成功を積み重ねていくことで企業は成長していきます。このような小さな実績や成功積み重ねてことで、横軸である「実現手段に対する従業員の同意度」が高くなってくると言えるでしょう。

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赤やじるし権力的手段(Power Tools)
目的とその実現す方法について、従業員と企業の考えが一致しない場合、権力にものを言わせ従業員を強制的に仕事させるという手段です。クリステンセン教授らによれば、このエリアに属する場合の解決方法は、この権力的手段が唯一の方法であるとしています

「権力にものを言わせて従業員に強制を強いる。」と言うとあまり聞こえが良くないように思われるかもしれません。そこでここでも、台湾でインテリア雑貨を販売したい日本企業を例にとって説明しましょう。

まず、前提として、この日本企業は、インテリア雑貨を台湾で販売するために、オンラインショップに焦点を当て、それに伴うマーケティング戦略を実行してすることが売上アップ工場に最適であると考えているとします。さらに、従業員は、まずそもそも「なぜ台湾で販売する必要があるのか。」「なぜオンラインショップショッピングでなければならないのか。」ということに不安を抱いているとします。

アグリーメントマトリックス理論に従うと、この場合の最適な方法は、会社が正しいと判断するマーケティング戦略を強制的に従業員にやらせ、早い段階である程度の実績や小さな成功を収めることです。そうすることでマーケティング戦略のやり方自体には、従業員からある程度の同意を得ることができ、アグリーメントマトリックスの【D】から【B】エリアに移行することが可能となります。

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このように、台湾進出を目指すあなたの会社が、この4つのエリアのどこに属しているのかが明確になれば、次にどのような手段で従業員の協力を得ることができるかは、このアグリーメントマトリックスというツールを使って検証してみることが可能となります。

当協会の見解として、台湾進出のために新しく形成された組織は、【D】または【B】にエリアに属する組織が多いのではないかと考えています。【B】に属するエリアが多いと考える理由は、台湾に進出する会社は、日本でのノウハウを少なからず利用できるところがあると期待するためです。

例えば、日本で培ったシステム化された業務フロー、業務管理ツールがあれば、台湾側がその使い勝手や効率性に納得し結果的に、台湾人従業員から「実現手段に対する従業員の同意度」を得やすいのではないでしょうか。逆に、台湾人従業員に対して、会社が掲げる目標に対して最初の段階で合意を得ることと言う事は非常に少ないのが現状です。その場合は、【B】に属することになります。

もし自分たち会社がこの【B】エリアに属すると考えるのであれば、このアグリーメントの法則に従って、経営管理的手段が有効であると考えてみることができます。そうすると、必然的に教育研修や業務手順の標準化、実績評価システムや金銭的インセンティブなどの項目を整え、従業員たちに対して、目的実現のために協力を得ていくことができるはずです。

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まずは、自分たち台湾進出に当たって形成する組織がこの4つのエリアのどこにあたるのかを考え、それに対応する手段で従業員の協力を得るような戦略を練ることが大切です。

まとめ

組織を新たな方向に導くためにリーダーは、以下2つのポイントをについて、従業員がどの程度同意をしているのか、を把握しなければいけないとしています。
赤やじるし1.「会社が掲げる目的」に対する従業員の合意
赤やじるし2.「会社が実行する実現手段」に対する従業員の合意

アグリーメントマトリックスは、この4つポイントを元に作った企業を分類できるとしています。

クリステンセン教授らの研究によれば、それぞれのエリアに対して、従業員からの協力を得るために、それぞれ適切な手段があるとしています。クリステンセン教授らは、適切な改革方法として、エリアごとに以下の4種類に分けられるとしています。

赤やじるし権力的手段(Power Tools)
赤やじるし経営管理的手段(Management Tools)
赤やじるしリーダーシップ的手段(Leadership Tools)
赤やじるし企業文化的手段(Culture Tools)

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(参考文献:The Tools of Cooperation and Change By Clayton M. Christensen, Matt Marx, and Howard H. Stevenson)

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