シャープ買収ホンハイ(鴻海)郭台銘(テリー・ゴウ)経営哲学

2016-07-19

ホンハイ(鴻海)の郭台銘(テリー・ゴウ)会長。
2016年3月、シャープの買収で日本でも一躍有名になった台湾人ですね。

シャープを買収したホンハイ機密工業(鴻海精密工業)は、売上高約1.3兆円、従業員約4,000人で主にiphoneや任天堂ゲーム機、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」の生産
を手がけています。

このホンハイ機密工業は、ホンハイ・グループ(鴻海科技集団)(またはフォックスコン・グループ(富士康科技集団)とも呼ぶ)の主要企業のひとつと位置づけられ、グループ全体の売上高は約14兆円(2015年)、従業員数130万人にもなる世界の超巨大企業です。
そのホンハイ・グループのトップに君臨するのが、台湾出身、創業者で会長の郭台銘(テリー・ゴウ)氏です。

1974年、ホンハイ・プラスチック企業という小さな会社から始めてたった30年余りでこれだけの巨大企業にまで成長させました。メディアからは「非情な経営者」と言われることもあります。そんな郭台銘(テリー・ゴウ)会長とは一体どんな人物なのでしょうか。

今回は、彼について書かれた書著「郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾」(ビジネス社、張殿文著、薛格芳訳、黄文雄監修)より、その人物像と彼の経営哲学を見てみましょう。

IMG_7033

「ラーメン、水餃子、蒸しパンだけで十分」

(郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾 P110)

郭台銘は世界有数の大富豪にも関わらず、非常に庶民的な一面を持っています。
彼が好んで食べるのは高級料理ではなくラーメン、水餃子、蒸しパンなどのB級グルメ。
シャープとの買収交渉で来日した際は、一人で吉野家に足を運び牛丼を食べたとも言われています。

中国ではワゴン車を運転して会議ではパイプ椅子に座ります。
財布や腕時計はブランド品ではなく株式総会や晩餐会でもらったものを身に付け、工場では作業員のすぐ隣で仕事をし、作業員たちと一緒になって汗をかきます。
「皇帝を演じたりはしない。」彼自身このように言っています。

このような庶民的で世界的に有名な起業家が一人いますがご存知でしょうか。それは、ウォルマートの創始者、サム・ウォルトンです。

この二人に共通することは、
一代で世界最大規模の会社を築き上げたということ、そして庶民的だということ。
起業したての小さな会社の頃から情熱をもって一人で走り回る姿勢が、巨大企業になってもそのまま継続しているというのも大きな共通点と言えるでしょう。

大成功する起業家は、創業当時の苦労を知っていて成長しても初心を忘れない、という一つのレッスンですね。

「製品を売らずにスピードを売る。」

(郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾 P22)

郭台銘の経営を語る上で欠かせないキーワードは、「スピード」です。
2006年日本メディアの取材でも「スピードをおいて、我が社は絶対に顧客をがっかりさせることはありません。」と語っています。ホンハイの強さの本質は、受注から納品まで一貫したスピードといえます。

また、郭台銘は日本企業へのアドバイスとして以下の2つを挙げています。
1.開発時間を短縮すること
2.サプライチェーンマネージメントの効率を上げて時間短縮すること

どんなに素晴らしいアイデアを持っていても、スピードがなければライバル会社に勝つことはできません。ホンハイは顧客の期待を裏切らないスピード感のあるサービスを売り物としているのです。

da
(画像出所:http://www.sankei.com/west/photos/160412/wst1604120002-p1.html)

「勝つ戦略は、『方向性』『時期・程合い』にある。」

(郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾 P34)

とはいうものの、ホンハイが成功している理由は、ただ単に「スピード」だけではありません。郭台銘が戦略で打ち出している「方向性」「時期・程合い」がなければまたホンハイのライバル社に勝つことはなかったでしょう。

赤やじるし●方向性
創業から7年目の1981年、ホンハイは家電部品組み立て事業からパソコンコネクター製造業への転換を果たしました。これはホンハイの歴史の中でも大きな方向性の転換と言えます。

当時、ホンハイの技術の40%~50%はパソコンコネクター製造にも使える技術であることが分かりました。家電産業衰退期ということもあり、郭台銘は腹をくくってパソコンコネクターの道を進むことを決心、インテル社を顧客に持つようになり、会社の成長が始まったのです。

赤やじるし●時期・程合い
方向性を決定したら普通は思い切ってガンガンと進むだけですが、郭台銘はそこでもカリスマ性を発揮します。

ビジネスでは勢いに任せる局面もあれば、あえて時機をじっと待つ局面もあります。
それが郭台銘の言う「時機・程合い」です。

そんな郭台銘がリーダーシップを持つホンハイは、市場の成熟期を見極めて最適なタイミングで市場に参戦する戦略を取るのが得意なんです。韓国のサムソンや台湾の友達(AUO)などの大手企業が競って大型液晶ディスプレイ(LCD)を導入したとき、規格がまだ不安定で市場の成熟度合いが見えなかったという理由から、ホンハイは参戦せずに外から静観するという戦略を取りました。

2012年には、大型液晶ディスプレイ(LCD)を製造していたシャープの堺工場を郭台銘個人が引き取り、サムソンはホンハイの台頭に脅威を抱いていると言われています。

方向性を定め最適なタイミングで市場に参入するという戦略が有効に働き、ホンハイは市場で勝ち続けていると言えますよね。

「企業文化を浸透させることで全員を一つにまとめる。」

(郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾 P194)

これだけの巨大企業をまとめるには良い企業文化の浸透が不可欠であることは言うまでもありません。ホンハイの企業文化は、以下4つ要素が基盤になっています。
・勤勉
・責任感
・資源共有
・努力が報われる制度

郭台銘は、「勤勉」と「責任感」については、日本企業から学ぶことができる部分があると語っています。日本人に勤勉さと責任感が無ければこれまでの日本の経済成長はなかったはずです。そういった日本人の良いところは積極的に学ぶのは郭台銘のみならず、多くの台湾人経営者に見られるところです。

「資源共有」について言えば、ホンハイでは、部門間の壁を取り除き経験や技術を共有するプラットフォームがあります。技術、情報そして、成功体験や失敗体験を共有することで組織のノウハウは強化されています。

「努力が報われる制度」も定着しているようです。郭台銘は優秀な従業員に対して報酬をはっきりと示していると言われています。努力し懸命に働けばより多くの報酬を受け取ることができる文化を作り上げ従業員がお互いに切磋琢磨できる機会と場を与えています。

無題
(画像出所:http://jp.reuters.com/article/sharp-restructuring-foxconn-idJPKCN0VE01H)

「チーズを抜くことができますか?」

(郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾 P137)

郭台銘は、アメリカのマクドナルドに行ったときに、店員にこう尋ねたそうです。
そして、そこで店員が「自分で取り除いて下さい。」と言うのであれば、彼らは規格化された商品を扱っているということだ、と。

郭台銘は、お客さんのためにすぐに取り除くサービスを提供する柔軟性がこれからの時代には必要であると感じているのです。
確かにそうかもしれませんね。新時代の顧客が求めているのは標準化されたものではありません。世の中は便利になり、個々に求めるものが違ってきているのです。それに対応するためには、製造業もサービス業に変化する必要があるのです。

とはいうものの、ホンハイほどの規模の組織には、どうしても「管理制度」が必要になりますよね。そうすることで品質を安定させ、また効率的に製造していく必要があるためです。制度と柔軟性の間で、どのようにしたら顧客満足を得ることができるか、郭台銘はこれがホンハイのひとつの課題と考えているようです。

まとめ

赤やじるし「ラーメン、水餃子、蒸しパンだけで十分」
大富豪にも関わらず庶民的。初心を忘れないことが大切。

赤やじるし「製品を売らずにスピードを売る。」
スピードがホンハイの競争力の根幹になっています。

赤やじるし「勝つ戦略は、『方向性』『時期・程合い』にある。」
正しい方向に正しいタイミングで進出することが勝つ秘訣です。

赤やじるし「企業文化を浸透させることで全員を一つにまとめる。」
巨大企業にとって、如何に良い企業文化を浸透させるかが、更なる成長のカギになります。

赤やじるし「チーズを抜くことができますか?」
製造業もサービス業に変化していく必要があります。そうでなければ競争に勝ち続けることはできません。

Copyright(c) 2017 BATH All Rights Reserved.