「蔡英文 新時代の台湾へ」から日系企業の取るべき戦略とは?

2016-06-20

蔡英文氏による台湾民進党政権が発足し一ヶ月が経ちました。蔡英文総統、そして台湾民進党は今後台湾をどのような方向に導いていくのでしょうか。そんな中、蔡英文著書による一冊の本が発行されました。書著のタイトルは、「蔡英文 新時代の台湾へ」(白水社、蔡英文著、前原志保監訳、阿部由里香・篠原翔吾・津村あおい訳)。

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著書自体は彼女が総統に当選する前のものですが、
今後台湾をどの方向に導こうとしているのか、
台湾をどのような国にしていきたいのか、
という蔡英文氏自身の考えがよく分かり、今後の台湾の方向性のヒントを得ることができます。

そして、そのヒントから日本企業としてビジネスの面で台湾市場にどのようなアクションを起こしどのように貢献ができるのかが見えてきます。

今回は台湾初の女性総統、蔡英文氏の書著「蔡英文 新時代の台湾へ」をビジネスの面から眺め、民進党、そして台湾はビジネスをどの方向に向かわせていこうとしているのかを見てみましょう。

イノベーション

この本を読んでいると「イノベーション」というワードが頻繁に出てきます。
蔡英文総統は、台湾経済を活気づけ国際競争力をつけるために「イノベーション」無しでは語ることができない、と考えていることがよく分かります。台湾の経済成長を見るとき、GDPを見るだけではなく持続可能な発展を目指すべきであり、それにはイノベーションはとても重要な役割を果たすと考えています。

彼女が考える「イノベーション」とは例えば以下のようなものです。

赤やじるし既存の製品やサービスの改良
赤やじるし1+1=2以上になる製品、サービス
赤やじるし今まで市場になかった製品、サービス

蔡英文総統は、台湾の製造、技術は高いレベルにあると認識しているものの、素晴らしいコンセプトや消費市場の情報をリードする力に欠けていると考えています。

そこで彼女が今やろうとしていることは、政府が「ハブ」となって製造、技術、クリエイティビティ、マーケティング、資本を結びつけて一つの「ネットワーク」を構築し運営するというものです。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)時代を大きく意識した改革を考えていることが分かります。

たとえば、家電メーカーと通信業者が提携することでコンピューター制御による家電を開発するアイデアを創出したり、精密機械メーカーと情報通信技術(ICT)を提供する企業が提携することで、インダストリー4.0のトレンドに乗る商品を開発したりすることを目指しています。

「農産物」と「デジタル」を掛け合わせてQRコードやREIDを利用した電子タグを付けることで生産履歴を管理するなどの流通革命ともいえる変化を起こすことにも前向きです。
これらの革命を実現するには、農業委員会、経済部、交通部、衛星福利部の食品薬物管理局などの中央省庁、そして各地方政府を巻き込んでのプロジェクトチームを立ち上げる必要があると述べています。

ゆび矢印●日本企業に求められるモノ
これらの蔡英文総統が掲げるイノベーションについて、あなたの企業が入り込む隙はあるでしょうか。
IoTのトレンドの中で付加価値を提供できる技術力や生産力、または提案力があれば台湾企業と提携することもできるかもしれません
今までの製品やサービスの提供先を日本から台湾に変えるだけでは、(よほどの製品やサービスで無い限り)台湾企業から見向きもされないでしょう。台湾企業と組んで成功するためには、共に新しいイノベーションを起こしていく覚悟と情熱を求められる段階にきているでしょう。

内需市場

1950年代から60年代の台湾経済の高成長期以来、台湾はこれまで主に輸出によって支えられてきました。ハイテク製品、IT部品やカバンやクツまでこれまで様々な商品を輸出し国際社会での台湾の地位を確立してきました。
そんな中、蔡英文総統は現在、台湾人の生活をより豊かにするための内需市場開拓を描いています。

赤やじるし都市の再開発
現在台湾全土で築30年を超える住宅は350万戸あります。
これらの住宅を再開発していくことで台湾人の住宅環境は大きく改善されることになります。台湾はこれから超高齢化社会を迎えます。高齢者が住宅で快適に生活できるようにするためにバリアフリー設備を充実していくことが重要でしょう。地震大国でもありますから、多くの人が大地震でも十分耐えうる強度の住宅に住むことを望んでいます。

これらの住宅を20年かけて再開発していくと、直接経済に貢献する額は年間で500億台湾ドルに上ると言われています。

赤やじるし高齢者の長期ケア
現在の高齢者は281万人、2025年までにはその数は500万人、台湾人口の20%になる見込みです。
これから訪れる超高齢化社会を踏まえ、蔡英文総統は在宅ケア、デイケア、夜間ケア、食事宅配、ショートステイ、リハビリ、健康維持増進などの各種ケアの充実を取り組むべきテーマとしてあげています。

これらのサービスを充実させるためには、ソーシャルワーカー、介護士、調理師、幼児教育、保育士などの雇用創出も必要です。

ゆび矢印●日本企業に求められるモノ
台湾の内需市場開拓に求められる技術やサービスを提供することができるでしょうか?
生活の質を向上させることができるような商品やサービスを広く長期的に提供し続けることができるでしょうか?

Tsai

(画像出所:http://www.forbes.com/profile/tsai-ing-wen/?list=power-women)

起業

今後の台湾経済発展を考える上で、「起業」というキーワードを外すことはできません。

蔡英文総統は、若い人々の活力と創意が尊重され、台湾発のイノベーティブな起業家が多く育って行く社会を願っています。
それを実現させるために若い人たちが積極的に挑戦できるビジネス環境を整え、例え失敗してもまたすぐに立ち上がることができるような「セーフティネット」を与える必要があると考えています。

前回の2012年台湾総統選に敗れてからの4年間蔡英文氏は、台湾各地を回り多くの台湾人たちと接してきました。
そこでエネルギー溢れる多くの若い起業家に出会い、彼らのスキルや情熱が台湾経済を内側から盛り上げる大きな力になると感じたようです。

蔡英文氏は「台湾は起業するのに適した場所である。」と明言しています。今後も若い人たちが起業するためのインフラ整備を優先的に進めて行くことでしょう。
台湾とビジネスを考える日本企業は、
台湾の経済を牽引している大企業だけに目を向けずこれから活力と創意溢れる若い起業家と提携することも考えていくことが必要になってくるでしょう。

ゆび矢印●日本企業に求められるモノ
これから台湾では若い起業家が多く出てくることでしょう。彼らは業種によっては積極的に海外企業との関わりを持つことになります。規模は小さいながらも小回りが利いてスピード感が溢れています。台湾人は他人から「良いところ」を吸収して自分のモノにするのが得意です。ビジネス交渉も達者です。日本企業にもそういった台湾の若者と渡り合うだけの体力とスピード感が必要です。

まとめ

蔡英文著書による「蔡英文 新時代の台湾へ」。
この書著から、今後台湾をどの方向に導こうとしているのか、台湾をどのような国にしていきたいのか、という蔡英文氏自身の考えがよく分かり、日本企業としても、今後の台湾の方向性のヒントを得ることができます。
キーワードは以下の3つ。

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点矢印画像内需市場
点矢印画像起業

「イノベーション」「内需市場」「起業」。今後の台湾のビジネス政策ではこの3つに関連する動きが見られてくることでしょう。これに呼応できる日本企業が台湾企業とビジネスチャンスを掴んでともに成長していくことができるでしょう。

この3つのキーワードには敏感になっておくことが必要です。

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